■おまんこを見たがるのは日本人だけ?
フランスの作家で開かれた男女関係の実践者として日本で多くの”信者”がいたシモーヌ・ド・ボーヴァワールは、「第二の性」の中で、ちんぽとおまんこについて、次のような屈折した対比を行なっています。「ちんぽは指のように清潔で単純である」「おまんこは女性自身にとっても胡散臭くしまい隠され、苦痛に満ち、ねばねばして湿っている。それは毎月血を流し、しばしばしっとり濡れて、危険をもたらす秘密の生活を送る」
とくにおまんこに対する女性のいい方に、日本の読者は男性・女性にかかわらず、ちょっとした違和感をおぼえるのではないだろうか。ましてや、彼女は女性解放の旗手と目された人物です。ここまで冷たい言い方をしなくてもいいんじゃない?と。
ですが、どうも欧米の男性のおまんこ観も、基本的には彼女のそれと大差はないらしいのです。いや、そればかりか独断と偏見を怖れずにいえば、大多数の欧米人は、おまんこに対してちんぽほど興味をもっていない!。それは、もちろん欧米人の男性が女性とのセックスに興味がないという意味ではありませんが、彼らが興味があるのはあくまでも「行為」であり、おまんこそれ自体ではありません。そして、男女とも性器といえば男のちんぽに強い関心を示すのです。
なによりの証拠としては、欧米には、伝説からドタバタ喜劇にいたるまで、特別なちんぽをもった男性が活躍したり波瀾を呼ぶ物語はあっても、特別なおまんこをもった女性が何かする、という物語はあまり見当たらない。性をめぐる物語のヒロインとなるのは、あくまでも好色・多情という魔性の女であり、彼女たちの武器は、頭髪を含む美貌と豊かな胸を含むグラマラスなスタイルで、おまんこの形や締まり具合とかなんとかは、少なくとも物語の題材にはならないらしい。
そんな彼らから見ると、おまんこを「観音様」にたとえて「拝ませてもらう」などといい、擬人化したり美化したり、ときには災難除けのお守りのモチーフにしたりする日本人は、そうとうヘンな趣味の持ち主に映るらしいです。「秘めごとの文化史」を書いたドイツのデュルも、本来、あくまでも「服を脱ぐ」プロセスを楽しむべきストリップ・ショーが、日本では産婦人科医顔負けの「陰門の検査」に重点がおかれていることに呆れています。もちろん欧米にも「陰門除き」の伝統がないわけではなく、ドイツでは十八世紀に有料の「陰門ショー」が興行的に行なわれた記録がありますが、その趣旨は、おまんこのディテールを鑑賞して楽しみ愛でるのではなく、汚物愛好に近いものだったらしいのです。
では、欧米人から見てビックリの日本のおまんこ愛好の一例を示します。舜露庵主人著「江戸の色道指南書の系譜」によると、「女大楽宝開」には、おまんこのランクは、「一高、一まん、三蛤、四蛸、五雷、六洗濯、七巾着、八広、九下、十臭い」とあります。また、「艶道日夜女宝記」は、おまんこの七種のバリエーションを「七開の図」として図示、七開とは「新開」「中品」「下品」「土器」「毛開」「核長」「前膝」のことですが、「毛開」は「開の左右満面生えれど、味良き物也」とあります。
重要なのは、こうしたおまんこ愛好の文化を、女性たち自身がよく理解していたことで。彼女たちは「男はなんでこんなものが好きなんだろうね」などといいつつ、それが男性に対して絶対的といっていい威力をもつ武器であり宝であることを自覚していたことです。そして、こうしたおまんこ観は、日本だけでなく、朝鮮半島や中国、インドシナなど、東アジアの米作地帯に共通するものと考えられます。
しかし、どうやらおまんこ愛好のチャンピオンは、それをチャドルの奥深く隠してきたイスラム世界のようです。そもそも、性器についてもっとも豊かな語彙があるのはアラビア語だというし、欧米の影響を受ける以前には、女性同士がエステについて語るように、陰毛の脱毛やおまんこの美容について、情報を交換し合うことも行なわれていたらしいです。
■おまんこの語源
女性の性器を総称して「陰部」と表現していますが、さらに細分化していえば、大陰唇、小陰唇、陰核(クリトリス)、会陰、膣の5つに大別されます。
ラテン語で膣のことをヴァギナ(VAGINA)といい、もともとは刀のさやのことで、現在では医学用語にもなっています。陰部という言葉はVULVA(ヴァルバ)といって別の言葉があるにはありますが、医学の世界でも巷でもほとんど使われていません。
英語のスラングではCANT(カント)、PUSSY(プッシー)、BUSH(ブッシュ)と表現しています。
インドではYONI(ヨニー)、北京語でビイ、俗に陰門(インメン)と言っています。
さてわが日本の俗称で、いちばんよく使われている「おまんこ」と「おめこ」と「ぼぼ」という言い方。関東では「おまんこ」といい、関西では「おめこ」。九州では「ぼぼ」というのが普通です。
ある日本の古い書物を見てみると「おめこ」は「下汚戸」と書き、「こまんこ」は「下汚戸」が語源であると説明しています。
そもそも”下”だとか”汚”といった文字を使っているのは儒教思想からきたもので、セックスを不潔な行為と考えていたからに違いありません。性器は汚れて醜い、隠すところとしてきたから、こうした漢字が当てはめられたのかもしれません。
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